2009Academy of Osseointegration Report
IN sandiego
◆2月26日(木)
いよいよ、学会初日。
今回の学会のメインテーマは、「A New Wave in Implant Therapy」、直訳すると、「インプラント治療における新しい波」となり、革新的進歩をとげているインプラントの世界を象徴するようなものでした。
初日の私のスケジュール
午前
企業主催のフォーラム参加、BIOMET 3i社コーポレートフォーラム参加
午後
3iインプラントの産みの親でもあるリチャード・ラザーラ(Richard Lazzara)先生、BIOMET 3i社スタッフの アニタ・ダニエルス(Anita Daniels)とともに、今年に私がアメリカで発表する論文についての意見交換会
BIOMET 3i社の社長スティーブ・シース(Steve Schiess)氏のスイートルームを使って、技術開発担当者 リック・サジェウスキー(Rick Sajewski)氏、ロバート・トーチャ(RobertTorchia)氏らと新商品の開発実 験
BIOMET 3i社の副社長ラース・ジャンソン(Lars Janson)氏の主催する夕食会に、スエーデンのドクターで あるマーカス・ダグネリッド(Marcus Dagnerid)先生、BIOMET 3iジャパン社の社長である杉 和信氏、 BIOMET 3i社のメリッサ・マニスカルコ (Melissa Maniscalco)さん、アジア・太平洋地区担当責任者ウ ルフ・セウェリン(Ulf Sewerin)氏、アニタ・ダニエルス(Anita Daniels)さんらと参加
Corporate Forum(コーポレートフォーラム)
初日の午前は各企業が主催するコーポレートフォーラムが開催されました。なんと、朝の8時から!!!
私がメンターをしているBIOMET 3iが主催するフォーラムでは4人の演者がプレゼンをしましたが、その内の2人、George F. Priest(ジョージ・プリースト)先生とAlan L. Rosenfeld(アラン・ローゼンフェルド)先生は私の知人でした。プリースト先生は私の医院を訪問してくれたことがありますし、私はローゼンフェルド先生のシカゴの医院を訪れたことがあります。
4人の演者のタイトルは次のようなものでした。
1、Enhancing Implant Aesthetics with Contemporary Technologies
George F. Priest, Jr., DMD
現代のテクノロジーによるインプラントの審美性の向上
2、The Art of Computer Guided Navigation for Implant Placement and Immediate
Provisionalization
Alan L. Rosenfeld, DDS
インプラント埋入と即時プロビジョナルのためのコンピュータガイドナビゲーションの技術
3、Immediate provisionalization: Practical Methods Using New Technologies
Michael S. Block, DMD
即時のプロビジョナル作製:新しいテクノロジーを用いた治療法
4、Innovation Techniques for Sinus Augmentation: Current and Future Trends
Zvi Mazor, DMD
サイナスオーギュメンテーションのための革新的テクノロジー:現在と将来の潮流
要約すると、4つの演題中の3演題がコンピュータガイドサージェリー(ナビゲーターシステム)によるインプラント埋入から即時のプロビジョナル作製と補綴操作に関するもの。
残りの1つが3i商品を使ったサイナスリフト、商品とは、ナノタイトインプラント(NanoTite)、エンドボン(Endobon、骨移植材)、オッセオガード(OsseoGuard、コラーゲン膜)のことです。
これらの3つの商品は残念ながらまだ日本では購入できないものばかりですが、私がBIOMET 3iのメンターであることから、私の医院ではアメリカでの発売以前から使用しています。
ナビゲーターシステム(Navigator)は間もなく日本でも発売されるとのことですが、このコンピュータガイドサージェリーについても私の医院ではすでに3症例の経験があります。症例についての詳細は、別の機会に報告する予定です。
ローゼンフェルド先生(シアトルにて) プリースト先生(シカゴにて)
午後
この日の午後の最初の仕事は論文のチェックでした。
BIOMET 3iのスタッフであるアニタ(Anita Daniels)とリチャード・ラザーラ(Richard Lazzara)先生を交えてのディスカッション。
ラザーラ先生の鋭い突っ込みにたじたじでしたが、最後は「ベリーグッジョブ!」で締めくくり。
一安心です。
JIRD(Journal of implant and reconstructive dentistry)2009 Vol. 1
No.1に掲載される私の論文タイトル
Histologic comparison of biologic width around teeth versus implants: A microvasculature SEM study)
和訳/天然歯とインプラント周囲のバイオロジックウイズに関する組織学的対比:微細血管の走査型電子顕微鏡的研究
アニタ・ダニエルスさん ラザーラ先生(シカゴにて)
午後の2つ目の仕事は、BIOMET 3i社の社長スティーブ・シース(Steve Schiess)氏のスイートルームを使って、技術開発担当者リック・サジェウスキー(Rick Sajewski)氏、ロバート・トーチャ(Robert Torchia)氏らと新商品の開発実験でした。
ここでの内容は極秘事項なので残念ながら記載できませんが、常に新しいことに取り組む姿勢は感銘を受けました。
リック、ロバートとともに BIOMET 3i社長スティーブ シース氏
ここまでで夕方の5時になってしまいました。
私は頭の中が英語でぐちゃぐちゃ、疲労困ぱい、次の予定は6時からBIOMET 3i副社長のラース(Lars Janson)の招待で夕食会です。
とりあえずドゥギーとビールを飲みに行こうということになりました、グッドアイデア!!
会場を歩いていると、たまたまマーカス(Marcus Dagnerid)が歩いていました。
僕たちはビール飲みに行くよ!と言ったら、マーカスも来るとのこと。三人でバーに出動です。
アメリカのバーやレストランは午後5時〜7時まで「ハッピーアワー」でお酒がディスカウントされるのでお得です。
マーカスはスエーデン人の歯科医師で、まだ28才の若者です。
数ヶ月前に大阪で私が彼にステーキをご馳走したので、今日はマーカスがおごってくれるとのこと。
彼のお父さんは、かのブローネマルク博士と大親友で今も近くにお住まいとのこと、マーカスの医院にはインプラント歴40年!!!という患者さんが数人いるとのことです。
私も自分の患者さんに「スエーデンの友人の医院では・・・」という話をよくします。
少なくとも40年前のインプラントが現在も機能しているという確かな証拠があるのです。
マーカスとの次の再会は今年の10月にモナコで開催されるEAO(ヨーロッパインプラント学会)です。
モナコ!!!とても楽しみです!!!
マーカス・ダグネリッド(Marcus Dagnerid)先生
◆2月28日(土)
学会もいよいよ最終日です。
私の一番のお気に入りのBIOMET 3iのスタッフ、Danielle Youngさんです。
最終日の午後はクロージングシンポジュウムが開催されました。
ここでのテーマは「The Catastrophic Failure」、直訳すると、「悲惨な失敗」となります。
この学会全体のテーマが「A New Wave in Implant Therapy」、直訳すると「インプラント治療の新しい波」でしたから、全く反対の事象が最後のテーマになっていました。
インプラント治療の発展は素晴らしいものがあり、高い成功率、CTの導入、コンピュータ支援手術、抜歯即時埋入、埋入即時負荷、審美的なインプラント治療など、華やかな話題が多いなかで、世界をリードするインプラント学会がその締めのテーマに「取り返しのつかない失敗」というものを選んでいるということは重要なことです。
確かにインプラントは素晴らしい治療です。
ただしこれは、「しっかりとした教育を受けた先生が正しく行えば!」という条件のもとでのみ成立する話なのです。
このことについては、ザ・クインテッセンスの4月号(来月発行)の
“Voice to the Editorial Board”
という「有識者からの意見」を掲載する欄で私が詳しく書いていますので参照してみてください。
ベーシックに基づいたうえでの最新機器の利用が不可欠
−OJミッドウィンターミーティングを通して−
クロージングシンポジュウムの内容
The Catastrophic Failure: Management strategies sharing the plan
取り返しのつかない失敗:プランを共有するマネージメント戦略
1、Medical legal & technical ramifications of failures
失敗がもたらす医学的、法律的、技術的な結果
Michael Ragan
2、Osteonecrosis & bisphosphonates : Treatment protocols and new data
骨壊死とビスフォスフォネート製剤: 治療プロトコルと新しいデータ
Earl G. Freymiller
3、Massive augmentation bone graft failure, What now?
大がかりな骨移植の失敗,この後どうするか?
Kenji W Higuchi
4、Management of a block graft failure
ブロック骨移植の失敗後の対応
Donald Clem
5、When one takes risk… There is hell to pay
リスクがあるインプラントはとても危険だ!(You will be in big trouble!)
Burton Langer
6、The effect of multiple implant failure on a practice
臨床における複数のインプラントの失敗が及ぼす影響
Rainer H. Bergmann
7、Malpositioned implants in the aesthetic zone
審美領域における不正な位置に埋入されたインプラント
Stuart L. Graves
8、Guided surgery catastrophes
ガイデッドサージェリーの大きな失敗
Stephen M. Parel
9、Biologics, BMP2 and the maxillary sinus augmentation
上顎洞増大に使う生物製剤、BMP2について
Jay P. Malmquist
10、Clinical success envisioned… A catastrophic failure results
思い描いた臨床の成功…しかしその結果は大きな失敗
David A. Garber