私が共同執筆した新刊書が発売されました。
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日常臨床における 再生療法のテクニックと長期経過
発行:株式会社 ヒョーロンパブリッシャーズ
編者:伊藤公一、内田剛也
執筆項目 症例編:長期経過からみた歯周組織再生法 GTR法を用いた症例 牧草 一人
CT画像解析をもとに、根分岐部病変および垂直性骨欠損部へのGTRの長期経過を詳細に報告するとともに、GTRを成功に導くためのキーポイントについて解説しています。
私が共同執筆した新刊書が発売されました。
日常臨床における 再生療法のテクニックと長期経過
発行:株式会社 ヒョーロンパブリッシャーズ
編者:伊藤公一、内田剛也
執筆項目 症例編:長期経過からみた歯周組織再生法 GTR法を用いた症例 牧草 一人
CT画像解析をもとに、根分岐部病変および垂直性骨欠損部へのGTRの長期経過を詳細に報告するとともに、GTRを成功に導くためのキーポイントについて解説しています。
認定医教育講演 5月16日(土)
学会では、専門医制度を設けており、専門医資格を取得したり更新したりする場合には、この教育講演に出席し、参加証明のスタンプをネームカードに押してもらうのです。それがポイントとなり、資格取得や更新には必要になります。したがって、毎回、会場に入れないほどの参加者が集まるのですが、私はすでに専門医であり、さまざまな公用からここ2年ほど参加していませんでした。今年もこれまで通り盛況だったのですが、問題は講演の最後のところです。
演者の先生が最後に謝辞を述べられ、感謝状を贈呈されている時に、多くの若い先生がぞろぞろと席を立ち、出口に向かって長い列を作っているのです(写真)。このような行為は失礼極まらない話で、彼らの関心ごとは、「ただ参加証明のスタンプさえもらえばいい」としか見えません。では、そのような考えの人が専門医になる資格があるのでしょうか?
演者の先生が、お世話になりご指導いただいた先生への謝辞を述べられたり、学会からの感謝状を受け取られるセレモニーに共感し、拍手をすることは、専門医以前、歯科医師以前に人として当然のことであると私は考えます。もしも私の考えが「古い」のであれば、それはとても残念なことです。
私は、質問があったのですが、このような状態で質疑応答の時間も割愛され閉会したため、とても残念でした。
この時点で、演者はまだ壇上にいるのです。
最後のスライドが終わる前からこのような状態でした。
日本歯周病学会 春期学術大会
岡山コンベンションセンター 5月16日(土)
土曜日は日本歯周病学会に出席してきました。この日の午後は、私の口腔外科の師である坪井陽一先生(元京都大学歯科口腔外科講師)が講演をされました。
患者さんに優しいインプラント治療とはなにか?
─即時負荷インプラントと低侵襲組織再生治療のコンビネーション─
先生はこれまでのご自身の足跡を紹介しながら、口腔外科専門医として組織再建に取り組んできた時代から組織再生へと変化してきた背景を実際の臨床症例を提示しながら解説されました。特に、患者さんベースの治療計画の立案が重要であり、低侵襲による組織再生治療や即時負荷インプラント治療についてのお考えをお話されました。坪井先生は、講演で「私にGBR
(骨再生誘導法)を教えてくれたのは牧草先生です」と言っていただき、私はとてもうれしく思いました。
最後には、司馬遼太郎の文章をご紹介され講演を締めくくられました。
時として、「あまり高尚な学問だけに身をおいていると、実際の人の社会とはかけ離れたところに行ってしまい、現実を見失ってしまうことになる」といった内容のものでした。私の考えも全く同じで、科学という言葉を自然科学だけと捉えて、患者さんの背景に眼をそむけるのは医療の本質からはずれてくると考えます。
座長の鴨井久一先生(日本歯科大学名誉教授)、坪井先生と私
大阪歯科大学歯周病学講座所属で当院勤務の奥野先生、阿部先生と坪井先生
歯適塾 講演会
千里ライフサイエンスセンター:5月17日(日)9時〜17時
この講演会に参加したきっかけは、私がザ・クインテッセンス誌の4月号で書いた論文に関して、内藤正裕先生(東京都開業)から、お誉めと励ましのお電話を頂いたことです。
内藤先生は、「私と友人の本多正明先生(大阪府開業、SJCD大阪最高顧問)の二人が大阪で講演するので、聞きにこないか?」とおっしゃり、私と牧草歯科医院副院長の岡村 大先生の2人で参加してきました。また、本日(5月18日)にはお礼のお電話まで頂き、本当にありがとうございました。
まず、朝のスタートから衝撃を受けたのは、内藤先生のオープニングトークでした。内藤先生のお話は、思想哲学についてでした。
「今ここにある形、思想は前後にある歴史的プロセスである」というヘーゲルの言葉の引用からスタートし、絶えず進行している現在、ベースとなる「マルクスの人文科学、社会科学」、「ダーウィンの自然科学、進化論」に思いをはせ、その上で、科学(Science)の一分野である自然科学、その一分野である医学、そのまた一分野である歯科医学を考えたとき、やはり人文科学や社会科学を無視して歯科医学は存在しえないということです。
さらに、細胞を対象とする医学に対して、細胞と無細胞性の「モノ」との融合を図るのが歯科医学であるとのことです。
内藤先生のオープニング講演要旨
いくら拡大を重ねて人体の構造を分析しても、システムとしての人体、情報を所有するヒトというものの本質は理解できない。「眼に見えないもの」によって構造化された「眼に見えると思われるもの」を捉える構造主義的な視点から、科学とは、事実と「思われる」ものを観察しているにすぎない。
われわれは、本当に事物を客観的に観察できているのだろうか? その答えは「ノー!」である。常にわれわれは、経験、負荷、時代背景などにより某かのバイアスがかかっていることを知るべきである。科学は客観的であるという人がいるが、では「客観的」とは何か? 全ての事実は素のままの裸の状態ではなく、「〜として」見ているのである。真に「客観的に観察」するということは、理論を背負っていることになる。そして、「データ」と呼ばれるものは、理論の後に生み出されるものである。
牧草の感想
自然科学偏重主義、データ偏重主義への警鐘は圧巻であり、本当に私の心を打ちました。
「最新」を錦のみ旗にテクニックや商品の紹介に終始してみたり、正確な分析もなく論文を自分の都合の良いように解釈して、それをエビデンスだと声を荒げる講演者が多い中で、内藤先生のような思想哲学を説く先生は、先を急ぎすぎる現在の歯科界では「至宝」だと思いました。
この話は奇しくも前日の坪井陽一先生のお話とも完全に符合するのです。
私は本当に嬉しく思いました。心ある先生はたくさんいるのです。
内藤先生のご講演
修復の永続性 −オーバーロードの観点から−
内藤先生のお話でとても興味深かったのは、「拡大機器(ルーペ、マイクロスコープ)は、小さいものが大きく見えることを目的としているのではなく、見えなかったものが見えるようになることを目的としているのである。」というお話でした。
私も全く同感で、単に拡大鏡であれば、「みなさんは高い虫眼鏡を買われるのだなあ!」と思っていたのですが、「見えなかったものが見えるようになる」道具であれば極めて有用なものだと感じました。もちろん、そうであれば歯や歯周組織の組織学や解剖学が身に付いていなければ使う意味がありませんよね!
また、先生のお話は、単に補綴の話にとどまらず、機能つまり摂食嚥下にまで及び、美しい補綴物の製作が最大の目標ではなく、機能的な補綴物の製作、その永続性がセットになってこその補綴治療であるとのお話は共感できるものでした。
さらに、オーバーローディングとそれがもたらすさまざまな問題点について詳細に解説され、非常に有意義なお話をたくさん聞くことができました。
本多先生のご講演
欠損補綴の目的
治療にあたって重要なことは、「原因の考察」と「病態の把握」であるとのお話からスタートし、実際の欠損補綴の治療計画の考え方をブリッジ、義歯、インプラントについて、利点と欠点を詳細に解説されました。
特に、無髄歯への対応は極めて重要であり、ブリッジの支台歯としては慎重になるべきであるとのことでした。
さらに、最近のインプラントの発表では、若い先生が前歯の審美的なインプラントの治療結果を提示されてはいるが、全体的な咬合の診査をしているというコメントをどなたもされていないことに危惧するコメントをされており、この点は内藤先生も同じことをご指摘されていました。
本多先生の講演を拝聴して素晴らしいと感じたことは、症例スライドの向こう側に「患者さんが見える」ということです。
私がよく見る講演スタイルは、ひたすらテクニックの解説が続き、その患者さんは何を解決したいと考え、何を希望されているのかがわからないものです。
確かに素晴らしいテクニックではあるのですが、それを聞いた若い先生はそのテクニックを実際の臨床でどの患者さんにどのように使ったらいいのかわかりません。
最後に本多先生は、医療には、患者さんの協力が必要で、患者さんの有意識下での協力なくしては治療の成功はない(認知行動療法)とのお話しされました。
私自身の反省を込めて、本当に素晴らしいお話を聞かせていただき感謝いたしています。
ザ・クインテッセンスの4月号に私の最新論文が掲載されています。
掲載欄は「Voice to the Editorial Board」といい、ザ・クインテッセンス誌が取り扱うテーマ、論文等について議論を深め、さらなる情報、思索の発展を目指して企画されたもので、オピニオンリーダーや有識者の意見を掲載するのが目的です。
今回の私のテーマは、インプラント治療につての現状と未来を考えたときに、
良いこと、つまり輝ける未来と、悪いこと、つまり安易なインプラント治療への警鐘という両極端の事象について、最新の学会事情とともに解説することでした。
関心のあるかたは、ザ・クインテッセンスp63-65をお読みください。
ベーシックに基づいたうえでの最新機器の利用が必要不可欠
- OJミッドウインターミーティングを通して -
牧草 一人
4月4日(土)、5日(日)の両日、京都大学のインプラント専門外来でお世話になった坪井陽一先生(元京都大学講師、スウェーデン イエテボリ大学客員教授)が福岡で講習会を開催されるとのことで、博多に行ってきました。
坪井先生は、スウェーデンのイエテボリ大学のペリオ・インプラント研修など、さまざまな所でお世話になった先生です。彼が行ったインプラントは、おそらく1万本をゆうに越えており、この数は日本でもトップクラスでしょう。
スウェーデン イエテボリ大学の手術室にて(左が坪井先生)
講習会は、福岡県内だけでなく、長崎県や宮崎県、関西の先生も受講されていました。
内容は坪井先生のオリジナルで、顎模型やブタ顎を使ったアドバンスコース(上級者向け)でした。
口腔外科専門医の坪井先生と歯周病専門医の私の出会いは、ちょうどインプラントが進化しだした頃で、お互いが持っている知識と技術を共有しあうことで、お互いに新たな世界へと飛躍したきっかけとなったものでした。
組織再生治療や形成外科手術の概念や治療法を熱く語ったり、お互いの手術を評価しあったりしながら楽しく過ごしたことは私にとって大きな財産ですし、素晴らしい口腔外科専門医(真の口腔外科専門医です!)に出会えたことを感謝しています。
そして、美味しいお酒と食事、楽しい会話、博多の夜は今回も裏切りませんでした。お世話になった皆さん、ありがとうございました。